2018年05月01日

看取り士日記より…bT0〜言葉にできない感動〜

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看取り士日記より…bT0
〜言葉にできない感動〜
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柴田さん写真-顔写真-4.jpg

日本看取り士会  会長
柴田久美子さん

 紅のつつじの花が鮮やかに美しい頃だった。
先月、旅立ちのあった奥様を訪ねた。
小さな仏壇のやさしい笑顔の健さん(享年66歳)にご挨拶をさせて頂く。
 みんなの話の間中、健さんの大好きだった愛犬ふーたは奥様の腕の中だった。旅立ちの様子を淡々と語られる奥様の様子に安堵する。奥様がはじめてベッドで添い寝をなさってその早朝だった。眠っている間に奥様に抱きしめられたまま、健さんは旅立たれたと言う。「柴田さん、ここに主人がまだいるようです」と終始、笑顔で話される。
 「大好きだったビール、毎日変えたほうが良いですか?」
 「お花が痛むので、ブリザーブドフラワーです。大丈夫でしょうか?」
と、次々に質問をなさる。
 「居間に置いていたベッドも片付けました。大きなテーブルも、もう私ひとりでは大きすぎて、処分しました。居間には何にもないんです。でも主人は変わらずにいてくれるんです」と。そして最後に「柴田さん、私は一人ぼっちになりました。私を看取って下さい」と言われる。
 「主人が柴田さんを紹介した時、看取り士さんはもうひとりの家族だよと言いました。その言葉の意味を、主人が亡くなって初めてわかりました。主人は私が一人きりになることが分かっていて、柴田さんを紹介したのですね」
 健さんの言葉の深い意味を、そこにいた誰もが強く感じる。言葉にできない感動、あたたかいもので胸はいっぱいになり、皆で泣いた。健さんの深い愛がその場にいた皆の心に届き、幸せに包まれた。命は永遠であることを、また教えられる。
 旅立たれて2か月、奥様と健さんの交流は深まっていた。
 「夜になると二人で長く話すんですよ」と言われたように、看取りは旅立ちの後もたくさんの導きをくれる。
 看取りは熟成していくもの、命は永遠と教え導くお二人に感謝  合掌




【お問い合わせ先】
一般社団法人日本看取り士会
一般社団法人 在宅ホスピス なごみの里
〒701-1145 岡山市北区横井上1609-2-107
TEL 086-728-5772 FAX 086-239-3992
Twitter: @ShibataKumiko

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2018年04月01日

看取り士日記より…bS9〜感謝の気持ちで見送る〜

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看取り士日記より…bS9
〜感謝の気持ちで見送る〜
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柴田さん写真-顔写真-4.jpg

【すこやかカフエ 九州・山口発】
終末期に延命治療をせず、自宅や住み慣れた場所で最期を迎えたいと希望する人は多い。こうした切なる思いを、家族はどう支えればいいのだろうか。
■父を自宅に呼び寄せる…「病院で死にとうなか」
 長崎県松浦市に住む小学校の男性教諭(52)は、肺がんで入退院を繰り返してきた父にこう告げられた。男性は妻(52)と話し合って、自宅で父を看取ると決めた。
 訪問診療してくれる医師と看護師を探し出し、当時82歳だった父を病院から男性の自宅に呼び寄せたのが一昨年6月。畑仕事が好きだった父のために、自宅そばの畑を見渡せる一室を父の部屋にした。
 元漁師で口数が少なかった父。若い頃は2人で話すことは少なかったが、畑を眺めながら、野菜の育ち具合や家族の思い出話に自然と花が咲いた。毎日の夕食と休日の昼食は、男性の子ども3人を含めた家族皆が父の部屋で食卓を囲んだ。男性は「孫と話す父親はいっもにこにこしていた」と振り返る。
■在宅死は全国平均以下
 年が明けると、父は食事が取れなぐなっていった。そして昨年1月。広島県で墓らす男性の弟と福岡県在住の姉が自宅に到着すると、それを待っていたように、隠やかな表情で息を引き取った。
 男性は「死を悲観するのではなく、『今までありがとう』という感謝の気持ちで見送ることができた。おやじの死を通して、自分もいずれ死ぬ時のためにどう生きるか深く考えるようになった」と話す。
 自宅で亡くなる人の全国平均は、2015年の人口動態統計では12・7%。九州・山口各県では最も高い山口ですら10・4%にすぎず、各県とも全高平均を下回る。大分は8・1%で、全国で最下位だ。一方、内閣府が12年に55歳以上の人を対象にした調査では、最期を迎えたい場所として「自宅」を選んだ人が54・6%。「理想の死」と「現実の死」のギャップはあまりに大きい。
■尊厳ある最期を手助け
 福岡市博多区で今年3月末、看取りに関する講演会が開かれた。登壇した一般社団法人「日本看取り士会」(岡山市)会長の柴田久美子さん(64)は「赤ちゃんは生まれると抱きしめられるでしょ。人は死ぬときも家族に抱きしめてほしいんです」と、参加者に語りかける。 柴田さんは小学6年の時に胃がんの父を自宅で看取った。「最期は手を握って『ありがとう』と言ってほほ笑んでくれた」。その経験から、看取りの文化を広めようと、12年、「看取り士」という資格を考案した。
 看取り士は公的な資格でないが、患者の希望を聞き取って家族にアドバイスし、尊厳ある最期を迎えられるよう支援する。同会が主催する講座を受講すれば取得でき、3月末現在、全国に約230人いる。
 長崎県松浦市の男性が父親の思いを実現させるために頼ったのも、県内在住の看取り士だった。柴田さんは「死を怖いものとタブー視せず、自宅で最期を迎えたいと希望する人の望みをかなえられる社会になってほしい」と願っている。 合掌
(高良亜矢子)





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2018年03月01日

看取り士日記より…bS8〜もうひとりの家族〜

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看取り士日記より…bS8
〜もうひとりの家族〜
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 寒さの中、愛らしく咲く雪柳の白い花に見送られて、現場へと急ぐ。
 暖かい居間に健さん(66歳)のベッドがあった。寝室ではなく家族が集まる居間にベッドが置かれている様子に、まずはご家族の温かさを感じて安堵する。すい臓がんの告知から5か月。最期まで自宅でと本人の強い希望でかかりつけ医、訪問看護師さんとの体制が整った翌日、私は訪問した。
 居間の本棚にも、私の著書が何冊も並んでいた。その本を見ながら、奥様が「この本が私たちの頼りです」と微笑まれる。

 「柴田さん、昨夜は40分間痛みが消えなかった。早く死なせてくれと叫んでしまったよ。でも今は全く痛くなくて幸せだね。
 こんなにたくさんの方々が私の周りに集まってくれて、私のために世話を焼いてくれるなんて、なんて幸せ者だろうね。もしかすると、僕が死んだらまだ若いからと同情する人たちがいるかもしれない。でも僕は全部すべき事はした。
 今は死ぬのにちょうど良い。『良い人生だったね』と言って欲しい。柴田さん、看取り士さんはもうひとりの家族だね」
 幸せと言う言葉を連発し、周りの私たちも幸せの中に連れて行ってくださる。
 愛犬はベッドの上で尾をちぎれるほどに振っている。彼の瞳の輝きがますます美しくなっていく。

 うっすらと涙目の奥様に微笑みが戻る。
 「柴田さんが26年をかけてしたかったこと、僕は今やっとわかったよ。最期はみんな幸せで旅立っていくということだよね。がんばってね。妻と出会って、僕の言うことを全て受け入れてくれて、僕は幸せだよ」

 その笑顔が最高だった。死が訪れ、それを受け入れた後に来る悟りの境地。私たち看取り士とって現場で「死」は禁句だが、本人の口からこれほどまでにイメージが作られ、完成させられている潔い場面に立ち会ったのは久方ぶりだった。

 幸せは伝染するもの。そんなふうに教えてくださった健さんに感謝  合掌




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2018年02月01日

看取り士日記より…bS7〜即身仏の世界〜

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看取り士日記より…bS7
  〜即身仏の世界〜
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日本看取り士会  会長
柴田久美子さん




 ろうばいの花の香りに癒される頃だった。
 ご相談のご連絡の後、すぐに駆けつけると、お電話してくださった奥様はご主人様の入院されている緩和ケア病棟で倒れ、点滴を受けておられていた。
 ご主人様の癌を治すためにこれまでに様々なことを試され、ずっと付き添われてきて、体力の限界に来ておられたご様子。その日からご主人様の病室に入らせていただく。病室に入ると、そこは明るく清らかなエネルギーで満たされていた。
 ご主人様はすでになにもかもご承知で、穏やかな瞳をされていた。ここは神仏の領域なのだと心身ともに引き締まり、やがて私も清らかなエネルギーに包まれる。奥様は、そんなご主人様の状態を今は受け入れ、私ども看取り士を呼ばれたのだった。
「なんとか生きて欲しいといろいろやってきたけど、やっと私も気持ちを切り替えられた」と。

 それまで看取り士を呼ぶのは見送りの準備をしているようで、抵抗を持っておられたようだった。奥様ともお話をしながらご主人様に寄り添わせていただく中で、看取りとは命の最期をカウントダウンして待つものではなく、最期まで命を輝かせ生き切ることに寄り添うことだとわかっていただけ、奥様のお気持ちも整っていかれる。
 それを待っていたかのように、ご主人様は痛みや苦痛もなく穏やかに逝かれた。奥様は膝枕をして、亡くなったご主人様に声をかけ続けてくださった。

 つい最近、奥様とお会いしてご主人様のことをお話しする機会があった。「あの時、夫は即身仏になっていっていたのだと思う」そう言われた奥様に、深いご主人様への愛を感じ、看取りの期間、おふたりに寄り添わせていただいたことに感謝で胸がいっぱいになった。

 外は初雪に陽の光が跳ねて眩しいほど。
 ご主人様の病室に初めて入った時のような眩しさだった。
 限りある命であることを最期の輝きの中で教え導いてくださった利用者さまに感謝 合掌
(担当看取り士  中屋敷妙子)




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2018年01月01日

看取り士日記より…bS6〜尊い手仕事〜

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看取り士日記より…bS6
  〜尊い手仕事〜
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日本看取り士会  会長
柴田久美子さん



 寒椿の花が固い蕾をたくさんつけて、冬を待つ頃になった。
 愛する人を看取りたいと思いながら、最期に立ち会えなかった里子さん(52歳)からのご連絡を頂く。最近こうしたご連絡がとても増えた。
「最期に立ち会えなかったの。どうすれば良いの?」
 泣きながら心の底から絞り出す様に話される声に無念の想いを受け止める。愛が深い程に、距離が近い程にその想いは重い。
 そんな時は背中に手を当てて、こう伝える。
 「大丈夫です。まだまだあたたかいです。背中から手を入れて。お腹にも。あたたかいうちは大丈夫です。間に合って良かったですね。」
 お身体が有る内は大丈夫。長い時間が経ったとしてもそのぬくもりが戻ることを数々の体験から教えられた。身体を寄せて触れる。看取りとは目で見て手で触れること。手で触れて愛する人のぬくもりを手に移すことで看取りは出来る。臨終コンプレックス(看取りに立ち会えなかったと言う暗い心)、こんな言葉が日本から消える日も近い。

 初七日は無論、四十九日までは愛する人の聴覚と臭覚は残っている。特に初七日までは生前と変わらない。生前と同じように、楽しかった事を語り、ご一緒にお茶を飲む。また愛する人がお好きだったものを残された家族が食べること。こうした豊かな時間を持つことで看取りは完成する。

 昨日取材で出会った若い記者さんが言った。
 「先日、父を病院で送りました。仕事が忙しいと僕は父と本当に向き合うことがなった様に思います。二度とやり直せない場面だからこそ、大事にすれば良かった。でも、どう大事にすれば良いのかすら分からなかったのですが。
 日が経つにつれて、心の中の後悔と言う冷たい石が大きくなっていきます。だからこそみんなに看取りの時間の尊さを伝えたいですね」
 笑顔で取材を終えた。

 スピードと効率の名の元に看取りの文化を変えてしまった日本だが、人を愛する心は変わらない。
 今日も深い心の奥にあるやさしさを教えてくださった人達に感謝  合掌





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2017年12月01日

看取り士日記より…bS5〜空間を愛に変えて〜

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看取り士日記より…bS5
〜空間を愛に変えて〜
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日本看取り士会  会長
柴田久美子さん



 11月のはじめ、山陰では珍しい快晴の空に迎えられる。
 神の国鳥取県米子市での第110回 看取り士養成講座。米子市は「看取りの家」なごみの里があった思い出深い場所である。受講生様は8人。今回は講師になるための研修もあり、総勢19人の皆様とご一緒する。
 胎内体感とは、看取り士養成講座の中に取り入れている、当事者意識に立つことを目的とした研修。携帯電話も預かり、4泊5日の静かな環境の中で自分と向き合う、意識変革をも可能な研修である。
 目指す頂上は、“慈愛”という、父母に、そして神仏に愛された胎内を体験しようというもの。
 受講生様からいただいた感想には、こんなことが書かれてあった。
 研修の中で書いた手紙を父や母に読むと「旅立つ時にこの手紙を一緒に入れてね」と涙を流してくれました。私は父母と仲良しだが、もっと親子の絆が強くなったと感じました。自分の命、人の命も同じように、大切に見つめ直していきたいと思います。

 また、先日は終末期の恵子さん(38歳)にも体感して頂いた。
 積極的な治療はできない中で、彼女の生きる時間がもっと輝くように、慈愛の世界に導く胎内体感を出張で行う。家事を手伝いに来てくれる母に素直になれないと言っていた恵子さんが母に向けて手紙を読む。
 「今 地獄から天国に変わった。ずーっと貴女をこうして抱きしめたかった」
と、お母様。
 「私より小さな母が、毎日赤ん坊を抱くかのように私を抱くのです。何だか恥ずかしいけれど、嬉しくて」と恵子さんは笑いながらそう私に話してくれた。

 心の奥の忘れ物。
 誰もが、みんな赤ちゃんで誰もが、みんな抱かれていた。
 そんな小さな小さな記憶が人を救う姿を彼女は見せてくれた。

 胎内体感、それは20年以上の内観講師と抱きしめての看取りを続けてたどり着いた先にあった自己探索法。旅立った方々からの贈り物と受けとめている。
 空間を愛に変えて、私達を見守り続けてくださる方々に感謝   合掌






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2017年11月01日

看取り士日記より…bS4〜魔法使いになって〜

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看取り士日記より…bS4
〜魔法使いになって〜
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日本看取り士会  会長
柴田久美子さん




 太陽の光がまばゆい程に呼びかけ、山々が美しく色づき始める。
そんな中に、一本の電話が入る。
「私は死にたくない。子供達の為に。お願いです。助けてください」
 まるで何かに怯えるかのような声だった。癌末期、腹水がたまり、歩けないほどの恵子さん(38歳)。
 毎日胎内体感を進める中で「私より小さな母が、毎日赤ん坊を抱くかのように私を抱くのです。何だか恥ずかしいけれど嬉しくて」と恵子さんが笑う。
 旅立ちの前々日には、集まった子供たちひとりひとりをベッドサイドに呼び
「お母さんは、魔法使いになっていつでもあなたたちのそばにいるから大丈夫!あなたたちは、大丈夫!」と伝える。
 そして旅立ちの前日、彼女は、「眩しいほどの光に包まれています。眩しすぎてカーテンを閉めたほどです。それでも光に包まれています。今は亡きお父さんの姿がはっきりと見えます」と言う。

 そして翌朝、ベッド柵を外し、彼女を抱き起こしご主人にベッドへ座って頂き膝枕をして頂く。お母様とお姉さまもベッドサイドへ。
すると、ピンと張り詰めた空気から一転。
 3人ともうわぁーと泣きだし「よく頑張ったねぇ」などとお声かけしながら涙を流される。
 ご主人は、奥様の頬を撫でながら「ずっと一緒にいようなぁ」と。
 背中に触れ、温もりを感じ頷くお兄ちゃんたち。
「お母さん、ありがとう」
 そう言って伝えたとき、恵子さんの表情はさらに穏やかなものになった。
 この間、3時間ほどご主人はずっと膝枕をしたままだった。
 そして告別式、5人の子供のうち4人の男の子は「お母さんありがとう」と口々に言う。最後に、小学校1年の女の子が「お母さん、大好き!」と呼びかける。告別式にお越しの皆さんの涙があふれだす瞬間だった。空気は晴れやかに澄み渡り、まるでお母さんがそこにいるかのようにあたたかい時間だった。きっと魔法使いになって彼女がそこにいたのだろう。相手の存在をそのままに、足す事も引く事もせずに、今の相手のままに丸ごと愛する事が命に向き合う事と教えた彼女に感謝 
合掌
(担当:看取り士 大橋尚生)






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2017年10月01日

看取り士日記より…bS3〜慈夢の中、愛に包まれて〜

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看取り士日記より…bS3
〜慈夢の中、愛に包まれて〜
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日本看取り士会  会長
柴田久美子さん



 細く可憐な彼岸花が満開の中で、静岡への講演会。
 穏やかに導かれるままに講演会を終える。

 会場の皆様が引かれた後に、一人の女性が涙ぐんで近づく。先日、愛するご主人をその腕の中に抱いて看取られた。
 1ヵ月前に、こんなご連絡いただいた。
 「3年前に余命宣告を受けました。
 当初は治るのではと気楽に構えておりました。
 しかし治る病気ではないこと、体力の限界が来ていること、主人の会話が死のことばかりであること。

 主人は自宅で私と2人きりで最期を迎えたいといつも言っています。一人で主人のことを考えると、不安以外ありません」
 大事なご主人の最期を覚悟しなくてはと思うのだが、何を相談すればいいのかもわからず。
 主人に何ができるのかを教えてください、不安やわからないことをどうすればいいのか教えてくださいと、混乱を隠しきれない様子。
 愛するご主人の最期を幸せにと思いながらも、心が乱れ、死という、重い荷物をどう心に収めて良いのか分からないという彼女だった。

 ご相談に対応、彼女の心が少しずつ整う。
 そしてお昼12時過ぎ、彼の大好きなカレーを作ろうと野菜を切り、鍋を火にかけながら、ご主人の手首に手を添える。二回トントンと脈を打つ。
 このトントンと言う脈は彼女がご主人の体を寝かしつけるようにしていたことの、彼なり返事のようだったと言う。

 講演会場で涙となぜか笑顔で抱きしめあった彼女の中に、確かにご主人の笑顔が見えた。
「問い合わせた時は、恐怖以外はありませんでした。
 相談をしているうちに、少しずつやるべきことが分かりました。最期は夢の中のように愛が溢れていました。満足です」
 心が整うことで、旅立ちは愛の中でと教えてくださったご夫婦に感謝 合掌




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2017年09月01日

看取り士日記より…bS2〜慈愛の看取り学〜

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看取り士日記より…bS2
〜慈愛の看取り学〜
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柴田久美子さん


 蓮の花が美しい。蓮の花言葉は、清らかな心。
 蓮の花をゆっくりと見つめながら看取り学上級の会場に向かう。

 看取りの作法−実技編と称して、旅立ちの時の作法をお伝えしている。
 先ずは靴を脱いで、受講生さまの太ももの上に頭を乗せ、ヨガマットに仰向けに寝る。
 看取る方が呼吸を合わせる一方で、他の参加者が手足を手でさすりながら「ありがとう」「お疲れ様」などと声をかける。

 「今は亡き母親と過ごした赤ん坊から3歳ごろまでの手の温もりが身近だった時代に、タイムスリップしたような無防備で心地よい時間だった。
 蚕が吐き出す絹糸で出来た繭にでも包まれたような感覚で、これだったら死ぬこともさほど暗くも、怖くもないと体感できた」と受講生の男性の感想にあった。
 また、「お母さんの子宮に戻ったみたい」と少し上気した顔をほころばせる60代の女性もいた。
 あたたかい看取り学の講座を終えた私に、現場からの電話。看取り学上級を受けたばかりの施設勤務の看取り士さんからだった。
 「もう旅立たれて1時間が経っています。どうすれば良いのでしょう」と不安そうな声。
 「看取り学で学んだ様に背中に手を入れて、その温もりをご家族に渡してください」とお伝えする。

 そして、ご家族を待つこと1時間。背中の温もりをご家族に渡し「間に合って良かったですね」とお伝えし、膝枕をして頂く。
 若いお孫さんの歓喜したお顔が印象的だったとのこと。

 「澄んだ空間での命、魂のバトンを目の当たりに感じました。看取り学上級講座の時とは違い、ことさらに穏やかな温かく幸せな思いでした」と後に報告を受けた。

 もったいないほどに、ありがたいことに、命懸けで尊い学びを下さる幸齢者様に感謝。 合掌




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2017年08月01日

看取り士日記より…bS1〜空間は慈愛に満ちて〜

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看取り士日記より…bS1
〜空間は慈愛に満ちて〜
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日本看取り士会  会長
柴田久美子さん


 あさがおのやさしい青色に幼い日の思い出を重ねる季節。
 私が親しくさせていただいている在宅医師、長尾和宏先生のブログの中に下記のような文章があった。
 6回目か7回目の呼吸困難でのSOS電話が早朝五時にかかってきた。またいつもと同じ希望だったので、大病院に連絡して救急搬送となった。
 しかし到着寸前に呼吸が停止し、救急救命師や医師たちが心臓マッサージをしたという。あらゆる蘇生処置を施したが、今回ばかりは蘇生できず、亡くなられたとのこと。蘇生処置成功が続いても、当然、いつかは限りがあるのだ。命はどこかで終わりがくる。
 そんな文章をため息まじりに読ませていただいた後、お電話をいただき、恵子さん(86歳)のもとにかけつける。ご自宅に訪問し、そのドアを開けた瞬間、透明感の高い空間に驚く。そしてお部屋の中に入ると、その空間はやさしい光に包まれていた。
 人は旅立ちの時、25メートルプール529杯分の水を瞬時に沸騰させるほどのエネルギーを出すと言われている。この膨大なエネルギーがお家、全体を清らかさで包んでいた。そこには、ほのかに甘い香りすら漂っていた。空間は愛、それを確信した時間だった。
 お身体に触れると、言葉を失うほどに穏やかで安らかだった。ご家族にそれをお伝えすると、ご家族の中に温かい空気がさらに広がる。息子さんは「抱きしめるなんて何十年ぶりだろう」と照れながらお母様を抱かれる。
 人は、赤ん坊として光の存在そのもので生まれてくる。そしてまた旅立つとき、私たちは光の存在として旅立っていく。私たちは死を見るのではなく、命そのもの、光に寄り添う存在なのだ。
 その後、娘さんからこんな言葉をいただいた。
「大役を終えた母は孫たちひとりひとりの到着を待って皆に触れられながら、やすらかに静かに息を引き取りました。
 とても静かで神聖な時間を親族皆で過ごしました。

 心豊かで幸せな最高の看取りを経験することができました」空間を光に変えて、愛する人々に抱きしめられて旅立たれた恵子さんに感謝  合掌



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