2018年03月01日

看取り士日記より…bS8〜もうひとりの家族〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
看取り士日記より…bS8
〜もうひとりの家族〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

柴田さん写真-顔写真-4.jpg

 寒さの中、愛らしく咲く雪柳の白い花に見送られて、現場へと急ぐ。
 暖かい居間に健さん(66歳)のベッドがあった。寝室ではなく家族が集まる居間にベッドが置かれている様子に、まずはご家族の温かさを感じて安堵する。すい臓がんの告知から5か月。最期まで自宅でと本人の強い希望でかかりつけ医、訪問看護師さんとの体制が整った翌日、私は訪問した。
 居間の本棚にも、私の著書が何冊も並んでいた。その本を見ながら、奥様が「この本が私たちの頼りです」と微笑まれる。

 「柴田さん、昨夜は40分間痛みが消えなかった。早く死なせてくれと叫んでしまったよ。でも今は全く痛くなくて幸せだね。
 こんなにたくさんの方々が私の周りに集まってくれて、私のために世話を焼いてくれるなんて、なんて幸せ者だろうね。もしかすると、僕が死んだらまだ若いからと同情する人たちがいるかもしれない。でも僕は全部すべき事はした。
 今は死ぬのにちょうど良い。『良い人生だったね』と言って欲しい。柴田さん、看取り士さんはもうひとりの家族だね」
 幸せと言う言葉を連発し、周りの私たちも幸せの中に連れて行ってくださる。
 愛犬はベッドの上で尾をちぎれるほどに振っている。彼の瞳の輝きがますます美しくなっていく。

 うっすらと涙目の奥様に微笑みが戻る。
 「柴田さんが26年をかけてしたかったこと、僕は今やっとわかったよ。最期はみんな幸せで旅立っていくということだよね。がんばってね。妻と出会って、僕の言うことを全て受け入れてくれて、僕は幸せだよ」

 その笑顔が最高だった。死が訪れ、それを受け入れた後に来る悟りの境地。私たち看取り士とって現場で「死」は禁句だが、本人の口からこれほどまでにイメージが作られ、完成させられている潔い場面に立ち会ったのは久方ぶりだった。

 幸せは伝染するもの。そんなふうに教えてくださった健さんに感謝  合掌




【お問い合わせ先】
一般社団法人日本看取り士会
一般社団法人 在宅ホスピス なごみの里
〒701-1145 岡山市北区横井上1609-2-107
TEL 086-728-5772 FAX 086-239-3992
Twitter: @ShibataKumiko

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


posted by たまゆら at 09:00| Comment(0) | 介護日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。